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長崎を洗濯致したく候〜ダイエイは長崎の歴史・文化を守り、次の世代へ継承します。
ながさき歴史散策は、ダイエイが長崎学研究家の宮川雅一先生の許可を得て過去の作品を定期的に掲載しています。
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第1回連載 明治天皇と西郷隆盛の来崎
 
第2回連載 坂本龍馬と長崎
 
第3回連載 長崎奉行・松平図書頭康平のこと
 
第4回連載 長崎と坂本龍馬に深く関わった
薩摩藩家老・小松帯刀
 
第5回連載 斎藤茂吉と長崎
 
第6回連載 福澤諭吉と長崎
 
第7回連載 女傑の茶商人・大浦お慶はねずみ年生まれ
 
第8回連載 姿三四郎のモデル 柔道家・
西郷四郎
 
第9回連載 明治期・長崎における産業経済界の大恩人・リンガー
 
第10回連載 長崎水産業界の恩人・倉場富三郎
 
NHK大河「ドラマ龍馬伝」応援企画@
三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎の初来崎
 
NHK大河「ドラマ龍馬伝」応援企画A
龍馬も出入りした土佐商会を作り高島炭鉱を経営
した後藤象二郎
連載第3回 長崎奉行・松平図書頭康平のこと
 
 最近、山門が立派に改修された鍛冶屋町の大音寺、その本堂横に、大きな五輪塔方式の墓石の立つ墓地がある。長崎市指定史跡の「松平図書頭墓所」である。なお、ここ大音寺境内には、このほか、戸田出雲守氏孟、大岡美濃守忠移、稲葉出羽守正申及び松波備前守正房という4人の長崎奉行の墓碑や市指定史跡の安南の花嫁アニオーさんも眠る「荒木宗太郎墓地」、「阿蘭陀通詞中山家墓地」等もある。
また、境内の大きなクロガネモチとイチョウは市指定天然記念物でもある。

  昨年は、この松平図書頭が長崎で亡くなって202年目に当った。すなわち、文化4年(1807)3月晦日、宝暦11年(1761)に生まれ、46歳の旗本で目付兼船手頭の松平康英(康平)が、長崎奉行に任命され従五位下図書頭となる。7月ごろ江戸を発って、9月5日恒例通り諏訪神社のおくんちを前に長崎に着任した。そして翌年、運命のフェートン号事件が起る。1789年(寛政元年)のフランス革命後、オランダ本国はフランス・ナポレオン軍の侵入を受け、国王はイギリスに亡命、オランダはバタビヤ共和国となり、貿易の相手であったオランダ東インド会社は消滅する。しかも同共和国がフランスと同盟を結んだので、イギリスとは交戦状態となり、両国は東洋でも対立。イギリスはこの機を利用してオランダの東洋植民地や貿易を手中に収めようとしていた。

  文化5年(1808)8月15日早朝、オランダ国旗を掲げた帆船が神崎沖に来着。出迎えに来たオランダ商館員2人を捕虜として船内に拘禁、翌16日朝、イギリス国旗を掲げて港内に侵入し、拿捕するオランダ船がいないのを確認し、今度はオランダ商館長・ドーフを脅して、日本側に食料・薪水を強要する高圧的態度に出た。怒った図書頭は、何とかしようとしたが、肝心のその年警備担当の佐賀藩兵の多くが勝手に帰国していて、兵力不足。
仕方なく要求通り食料・薪水を給付。フェートン号は17日午後、悠々と出航していった。

  その夜、図書頭は、鎖国の禁を破った責任を取って奉行所で自刃して果てた。通報を受けた江戸幕府では在府中の佐賀藩主を呼び出して強く譴責し、藩主は謹慎、責任者の家老以下7人に切腹を命じた。
ほかに1人の藩士が自刃。
異常事態に冷静に対応し、長崎を戦火にさらすことなく、無念の死を遂げた図書頭に、深く感謝と同情を抱いた長崎町民は、総町が相謀って諏訪神社境内に康平社を造営し、図書大明神として祀った。
康平社は、現在も祖霊社として合祀されて、諏訪神社本殿右の石段を登った所に鎮座している。

  境内のこの辺りは、緑の樹木の間に赤い鳥居が並ぶ玉園稲荷神社や受験の時期にはお参りする人の
多い諏訪天満宮の社祀もあり、正面には彦山すぐ下には移築された旧旅館・諏訪荘の立派な木造建築物を見ることのできる、清々しい場所である。



                                                  長崎都市経営研究所所長
                                                  長崎学研究家 宮川 雅一
 
<プロフィール>
宮川 雅一 (みやがわ まさかず)
昭和 9年生れ
長崎市に生れ勝山国民学校→長崎中学校(新制)→長崎東高等学校を経て
昭和32年 東京大学法学部卒
昭和54年 長崎市助役
昭和62年 長崎都市経営研究所所長
著書には「長崎散策〜歌碑歌跡を訪ねて」・「斉藤茂吉の歌碑歌跡を訪ねて」・「向井去来の句碑足跡を訪ねて」などがある。
近年は、学さるくをはじめ文化継承活動にも精力的に活動なされている。
 
 
 
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